第4章 愛か情か〜冨岡義勇、時透無一郎
時透無一郎〜side
凛の性格にはウンザリする。ベタベタ毎日。他人にあんなにベタベタされるのは好きじゃない。
だけど、ゆきの添い寝は大好きだった。ゆきとは身体が触れ合うのが心地よくて大好きだった。ゆきの髪に触れて、僕の髪にも触れてもらい、、、柔らかい唇
もうどれくらいゆきに触れてないだろうか。
あの日の事、僕は忘れてないよ。無理やり抱いてしまった事を後悔してるんだ。
だからあの日からまた触れたら拒絶されるんじゃないかと思い触れてない
それに、忘れたフリもしてるんだ。
だって僕は、君の事が好きだから。
離れてほしくない。冨岡さんの継子になんてならないでほしい。
まだ未完成な僕は、大人の冨岡さんみたいな魅力はないかもしれないけど、、、。
ほんとに、毎日心が苦しい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
もうすっかり季節は秋に変わっていた。川辺にゆきは腰掛けていた。
隣に気配を感じた。
見上げると、無一郎だった。
「師範。お団子おいしかったですか?」
無一郎は、遠い目をしたまま川を見つめていた。
「食べてない」
「え?凛とお出かけしなかったんですか」
「うん」
しばし無言の時間が流れた。川のせせらぎだけが聞こえる。
「あの、師範、、、」
「何」
「いや、別に、、、」
2人の後ろを馬車が走った。馬車から荷崩れした荷物が落ちてきた。
「危ない」
目を開けると無一郎がゆきをしっかりと抱きしめていた。
いきなりの事で、無一郎はすぐに身体を離した。
「大丈夫?」
「は、はい」
無一郎は、心臓が弾けそうだった。久しぶりに触れるあの柔らかい感触、、、。
髪の匂い、、、。
「あの師範…私屋敷に戻りますね」
お辞儀をしてゆきは去っていった。