第30章 霞が消える時〜時透無一郎 冨岡義勇【R18】
お館様が柱達を集めたのは報告があったからだった。
「皆様に集まって頂いたのは、甘露寺様と時透様についてのご報告です。」
あまね様がお館様の代わりに柱達に伝えた。
報告は、上弦の鬼を甘露寺、時透、竈門兄妹、不死川玄弥みなで闘い倒した事。
その者達は今蝶屋敷で治療を受けていて、重症だと言う話だった。
それと、無一郎の過去の記憶が戻ったと言う報告もあった。
報告を受けて義勇は、誰よりも先に席を立った。その後を不死川は、追いかけた。
「おい!冨岡」
義勇は、振り返らず立ち止まった。
「今日は、ゆきを俺の屋敷に返せよ」
「ゆきがお前の所に帰ると言うならな」
「時透が治療中だといえ帰って来ているんだ。お前の所に居るなんて示しがつかねーよ。」
義勇は、無視して屋敷を後にした。
〜〜〜〜
義勇の屋敷ではゆきは、誰も居ないが無一郎の屋敷に一人で居ようと決めて屋敷を出るところだった。
「ゆき何している?」
「師範…」
義勇は、ゆきの腕を引いた。
「今日もここに居ないのか?」
「まだ無一郎くん帰ってないけど一人で無一郎くんのお屋敷に居ようと思います。」
「今夜もお前と居たい」
ゆきは、力無く首を横に振った。
「分かった…明日稽古には来い。」
「はい」
ゆきは、足早に義勇から離れた。そんなゆきの後ろ姿を義勇は眺めていた…。
言うべきだったはず…時透が帰ってきている事、蝶屋敷で治療を受けている事、そして過去の記憶が戻った事…。
なのに俺は言わなかった…。
最低だな。
〜〜〜
無一郎の屋敷に向かっていると、遠くから鴉の煩い泣き声が聞こえてきた。
だんだん近づいてくる…。
「アンタナニシテルノヨ!!」
見ると無一郎の鎹鴉だった。
「銀子ちゃん!?」
「ハヤク無一郎ノトコロニイキナサイヨ!」
「だって今刀鍛冶の里でしょ?」
「ハァ?水柱カラキイテナイノ?オオケガシテ、チョウヤシキニ、イルワヨ!」
「え?」
無一郎くんが、大怪我?義勇さん何も言わなかった。早く蝶屋敷に、行かないと…
ゆきは、銀子と一緒に蝶屋敷に向かった。
心配で心配で仕方なかった。
無一郎くん…早く、早く会いたいよ…。