第105章 無一郎と美月の仲〜時透無一郎
幸は、二人の間に漂うどこか甘く切ない雰囲気にすっかり気圧され、薬やらを準備する手元が狂いそうになるのを必死で抑えていた。
「では、抜きますね」
次の瞬間、硝子片が引き抜こうとするが奥に刺さりなかなか抜けない、激痛がゆきを襲う。
「んっ…!」
痛みと恐怖で顔を歪めたゆきは、後ろから自身を力強く抱きしめている義勇の膝を、爪が食い込むほどぎゅっと掴んで耐えた。
あまりの苦痛に身をよじろうと足が跳ねそうになるが、義勇は胸の下に回した腕にぐっと力を込め、逃がさないよう優しくも確実に身体を固定する。
口に咥えさせられた義勇の腕
痛みで我慢できずに噛みついてしまいたい衝動に駆られるが、ゆきには力を込めて噛むことなど到底できなかった。
代わりに、必死に耐え忍ぶ熱い吐息とともに、小刻みに震える舌先が義勇の肌へ触れてしまう。
腕に伝わる熱さと濡れた触感に、義勇の背筋に小さな痺れが走った。
しかし彼は眉ひとつ動かさず、ただ静かに抱きしめる腕の強度を保ち続けた。
「…もう少しだ、耐えろ」
耳元で囁かれる義勇の低く落ち着いた声が、激痛に錯乱しそうになるゆきの意識を繋ぎ止める。
幸は手早く硝子片を抜き去ると、消毒薬を塗り、手際よく包帯を巻き上げていった。
「終わりましたよ。…本当によく耐えられましたね。深い所に入り込んでいたので痛かったはずです。」
幸の声に、ゆきは緊張の糸が切れたように深く息を吐き出し、義勇の胸の中でぐったりと脱力した。
義勇はそっとゆきの口から腕を外すと、赤く跡のついた自分の肌には目もくれず、ゆきの乱れた髪を優しく撫でた。
「よく頑張ったな」
ゆきは、痛みで意識が朦朧としていた。義勇の胸元に完全に身体を預け荒い呼吸をしていた。
幸は、その姿に思わず魅入ってしまう。ゆきの柔らかな唇からは、唾液がきらっと光っていた。
義勇は、ゆきを上から覗き込み親指でそっと口元を拭ってやっていた。
妙に色っぽい脱力したゆきの姿
幸は、そんなゆきから目が離せずにいた…。
「ゆき大丈夫か?」
「…す、みません…痛く…て…」
そう答えるが、ゆきは義勇の身体に身を委ねたままだった。