第103章 川辺の再会〜冨岡義勇【R強強】
息を切らしながら屋敷へと帰り着くと、そこには心配そうな顔をした隠が、玄関先を行ったり来たりしながら待っていた。
「良かった…! 遅いので、道中で何かに巻き込まれたのではないかと心配いたしましたよ。水柱様とご一緒だから半分は安心していましたが…」
「ごめんなさい。少し、話し込んでしまって…」
ゆきは手元の買い物袋をぎゅっと握りしめ、精一杯の愛想笑いを浮かべた。
しかし、胸の奥の鼓膜を震わせるようなドクドクという心音は、一向に収まる気配がない。
隠に挨拶を済ませて自室へと駆け込み、障子を閉めてようやく一人になる。
どっと押し寄せた疲労感に思わず床へ座り込むと、途端に先ほどまでの義勇との出来事が脳裏を支配した。
義勇さんと、あんなことを…
唇に残る微かな熱と、髪を撫でられた指先の感触が鮮明によみがえる。
彼に組み敷かれていたときの重みや、あの低く囁かれた「二人だけの秘密」という言葉が、ゆきの身体を縛りつけて離さない…。
と、同時に、胸を刺すような罪悪感と共に無一郎の顔が浮かび上がった。
いつも自分を真っ直ぐに見つめてくれる、あの澄んだ瞳。彼を裏切るような真似をしてしまったという事実が、ゆきの心をえぐる。
しかし、その罪悪感は、すぐに掻き消された。
無一郎の隣で、楽しそうに微笑む美月の姿。
二人が親密そうに寄り添い、自分が入る隙などないかのように見えたあの空間。
それに、無一郎くんは…自分の話より美月の話を信じた
無一郎くんだって、美月さんとあんなに仲良くしているのに
裏切られたような寂しさと、義勇の熱に流されてしまった自分への嫌悪感が混ざり合い、視界がじんわりと滲んでいく。
ゆきは小さく膝を抱え、まだ震えの止まらない唇をそっと指先でなぞった。
義勇も、また同じく熱くなった身体を持て余していた。
ゆきの久し振りの唇の感触を噛み締めるかのように思い出す…。
無一郎と、うまくいかずすれ違っている事もわかった。
それに、また…二人だけの秘密が出来た…。