第8章 恋バナと正体と
『た、高尾くん』
「ひー…腹痛ぇ…
でさ、名字ちゃん演技だと思って表情コントロールしたらどう?って思ったんだけど」
『演技…撮影…』
それなら行けそうと考えていると何か忘れていることを思い出す
撮影…あ、春雨さんからの電話だ
さっき宮地さんと電話してて…後程電話するって言ったんだっけ?
…これはヤバイかも
『ごめん高尾くん!
ちょっと電話するけど気にしないでね!』
「リョーカイ」
『春雨さん!』
《名字ちゃぁぁぁぁん!
急ぎの仕事が入ったら電話だって言ったでしょ!?》
『す、すみません!』
《既に迎えに来てるから、急いで!》
『ち、ちなみに着替えは!』
《持ってきてるから急いで!》
『了解しました!』
ピッと通話終了ボタンをタッチして高尾くんの方をくるりと向く
そうすると高尾くんは声を押し殺して笑っており、再度頭に来たけれどそんなことを気にしている場合ではない
『ってことで高尾くん!
あたし帰るので、先生には適当に言っとけば分かると思うのでよろしくお願いします』
「おー、頑張れよ!」
『うん!
あたしのことは内緒にしておいてね!』
「当たり前だっつの!」
ニッコリと笑う高尾くんに安心して(なぜか)手元にある荷物を持つ
…電話に出なかったあたし、恨みます