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《冨岡夢》恋い、慕う[鬼滅の刃]

第1章 現代




『あの…、これ…』

「ん…?え、なに?」

『これ、差し上げますから…
母は起きそうにないので
これを持って行ってください。』




…もうこれ以上、
赤の他人に家の物を触られたくない。


早く出て行ってほしい…



頭の中でそう唱えていると
男はニコッと不気味な笑みを溢し
私からお金を受け取っていた。




「ありがとうね〜、んじゃ、遠慮なく。」




男は上機嫌になると
母には目もくれず、玄関の方へと向かって行ったが
身体をくるっと私の方へ向けてきた。





「君、いい娘さんだね〜?
お金くれたお礼に、今度どこか連れてってあげようか?」

『…。いえ、仕事が忙しいので。』

「あ、そう?じゃあ暇ができたら教えてね?
俺が色んなこと…、教えてあげるからさ。」


『っ…』



…なにこいつ、気持ち悪い。



満面の笑みで微笑む男の顔は
優しく見えるけど…



目の焦点が変だし、瞳孔が開いている…

きっと、薬物依存者に違いない。





なんで母は、こんな男と恋人になったんだろう…。




「じゃあ、またね?」




男はそのまま私の返事を聞かず
家から出ていった。







『はぁ…、もういや…』




あの男が母からもらっているお金は
私が仕事で稼いだお金。


いつも母には、給料のほとんどを渡しているから
私が働いて稼いだお金は、あの男に奪われている…


まるで、私が貢いでいるような気分だ。




未だに机の上に突っ伏して寝ている母に
泣き叫んで怒鳴りたいけど…



ずっとこんな生活をしているから
怒りや悲しみの感情を出したところで
何の意味もないことはもう分かってて…

私は諦める事に慣れてしまっていた。





私のこれからの人生…
ずっとこんな感じで進んでいくのかな…


20歳の女性なら、恋人や友人と楽しい時間を過ごしているはず…


今の私には、そんなこと夢のまた夢だ。




…まぁ、母の姿を見ていると
恋愛をしたいだなんて思えないんだけどね。





『はぁ…、明日も仕事だし…、片付けて早く休も。』





母が飲み切った酒瓶や
散らかっている部屋を綺麗にしてから
私は自分の部屋の布団で眠りについた。



明日は、何事もなく平和な1日が終わりますように…




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