第3章 積極
『えっと…改めまして、 といいます。
既に2ヶ月も経ってしまいましたが…
山の中で鬼から助けてくれて、
ありがとうございました!』
畳に手をついて頭を思いっきり下げると
上から冨岡さんの落ち着いた声が降ってきた。
「怪我は…もう良いのか?」
『はい、1ヶ月くらいで完治しました。』
「そうか…」
『はい…』
困った、どうしよう…
会話が続かない!!!
しのぶちゃんと初めて話した時は
もっとスラスラ喋ることができたのに…!
なんで!?
何かいい話題はないか悩んでいると
今度は冨岡さんから声を掛けてくれた。
「、と言ったな…
お前、あの山で何をしていたんだ?」
『ん…?え、え?』
「あの山に入った理由を聞いている。
鬼殺隊の隊士ではないようだが…」
『ちょ、ちょっと待って下さい…!
冨岡さんは、あの…
しのぶちゃんから何も聞いてないんですか?』
「何も。手紙を交わす間柄でもないし
前回の柱合会議、俺は任務で出れなかったから。」
そうなんだ…
てっきりしのぶちゃんから
全部聞いてると思ってたのに…。
あまりにも奇妙な出来事だから
誰にも言わずに黙っててくれたのかな…?
気を遣ってくれたのかな…?
しのぶちゃんにはまだ、私が自分の命を捨てて
この時代に来たという経緯は話していない。
でも何も詮索されないし
好きなだけ蝶屋敷にいてくれていいと言ってくれた。
鬼から命を救ってくれた冨岡さんにも
ちゃんと自分のことを説明しないといけないって分かってるのに
令和時代に過ごした、絶望ばかり感じる日々を話すのは…
どうしても抵抗がある。
鬼殺隊の人たちは、鬼を倒しながら
多くの人の命を救っているのに…
私が、自分で自分の命を絶ったと知られたら…
どんな反応をされるか、想像するだけで
怖くて体が小刻みに震え出した。
「…。。」
『は、はい…っ』
「話せる範囲でいい、無理には聞かない。」
『ぇ……でも…』
…あれ、
冨岡さんは別に私のことなんて興味ないのかな?
それとも、助けてくれたのも実は気まぐれで
今、私から醸し出された重い空気のせいで
気を悪くさせちゃった!?