第2章 大正
「さんは
私が今まで出会った人とは、違う何かを感じます…。
冨岡さんが、貴方を気にしていた理由がよく分かりました。」
『…??』
なんでここで、冨岡さんの名前が出てくるの…?
気にしてたっていうのは
私の怪我を心配してくれてたってこと…だよね…?
でも心配する気持ちは
怪我をした人に対して、誰にでも思うことだから
何も特別な感じはしないんだけど…。
…結局、胡蝶さんが何に対して笑っているか
何も分からないままで
胡蝶さんは最後に、「お大事に」と言って
部屋から出ていった。
『何かよく分からないけど…
拒否されなかったら、きっとまた…喋りに来てくれるよね…?」
いきなり大正時代にやってきて
鬼と戦って、鬼殺隊っていう組織の存在を知って
自分の身に起きたこの状況が
まだ全く整理できないけど…
胡蝶さんみたいに、私に優しくしてくれる人がいて
冨岡さんみたいに、私を助けてくれた人がいて…
令和の時代じゃなくても、私は生きていける…
何となくそんな気がした。
今後、自分がどうなっていくのかは分からないし
すっごく不安だけど
今はただ、全身がズキズキとかなり痛むこの傷を治すことに専念しよう…。
ベットの上で横になりながら
窓から見える外の景色を見て、そう決めたところで
睡魔が私を襲い、体を休める為に眠ることにした。
令和の時代にいた頃は
毎晩眠る前、平和な時を過ごせるように祈っていたけど
私はこの日…久しぶりに
穏やかに、安らかな気持ちのまま眠ることができた。
…眠りにつく前には、胡蝶さんの優しい笑顔、
それと、命を救ってくれた冨岡さんの綺麗な顔が頭の中に思い浮かんで…
もう一度、あの青い色の綺麗な瞳を見たいな…
…意識を失う前にそう思ったことは
起床してから完全に忘れてしまっていた。