第19章 看護 ✴︎
雨の中ー…
私と冨岡さんはお互いに口を開く事なく
ただ黙々と歩き続けて…
しばらくすると漸く冨岡さんの住まいである屋敷が見えて来た。
『…お邪魔します……。』
初めて来るわけでもないのに
何だか今日は玄関に入っただけで、いつもより緊張する…。
きっとその理由は
私の隣にいる冨岡さんが、雨で髪が濡れたことで
とんでもないほどの色気を感じさせてくるからだろう…。
『あ、あのっ…、冨岡さん…早く着替えた方が…』
「あぁ…、そうだな……、っ…!」
返事をしながら私の方を振り返った冨岡さんは、一瞬驚いた顔をした後、すぐにパッと私から目を背けていた。
『…??どうかしました?』
「…。眼鏡…」
『え?眼鏡?…あ、さっき外しました。
雨の水滴がついちゃったから、後で拭こうと思って。』
「はぁー…」
…え!?何でため息吐いてるの!?!?
眼鏡取ったらだめだった!?
冨岡さんがため息を吐く理由が全然分からず
1人で不思議に思っていると、冨岡さんは私に背を向けたまま、ポツリと言葉を発し出した。
「直視…できない…」
『え…?私の顔が…ですか…?』
「そうだ…」
『…。あ!!もしかして顔に泥とかついてます!?
そりゃあ見苦しいですよね…!!すみませんっ!!
でも雨だったから…』
「〜〜っ、全く…、お前の鈍さには呆れる…」
『なっ…!
冨岡さんの言葉が足りないんですよ!!』
ため息を吐かれた後で鈍いとか馬鹿にされて…
全く意味が分からなかった私は
ムスッとしながら言い返すと、冨岡さんは私の方を振り返るとすぐに距離を縮めて来ていた。
「素顔のお前は…綺麗だと言っただろう…」
『っ…え、』
「それと…、お前の髪…」
『か、かみ……?』
私の髪の毛がどうかしたのかと
近くなった距離間に戸惑いながら説明を求めると、冨岡さんの手が私に伸びて来て…
一束毛先を指で掬い、私に熱い視線を向けていた。