第18章 憤慨
雨も気にせず私を抱き締めてくる冨岡さんを、改めて大好きな人だと実感した私は
持っていた傘から手を離して、冨岡さんの背中に手を回して抱き締め返した。
『来るのが遅くなって…ごめんなさい…』
「いい…。お前に会えたから…」
雨の音は大きいけど、小さな声で発せられた冨岡さんの言葉はしっかりと私の耳に入って来て…
私に会えた事を心から喜んでいるのが
抱擁からも伝わって来た。
冨岡さんのことが大好き…
そう思いながら
雨に濡れたまま、しばらくの間抱き締め合っていると、冨岡さんが私の肩を掴んでスッと身を離した。
「これ以上濡れると、お前の体が冷えてしまう。」
『あ…はい…』
冨岡さんの視線が地面に落ちている傘に向けられていたから、私は傘を拾い、お互いが濡れないように傘を掲げた。
『冨岡さんはかなり濡れちゃってますから
着替えた方がいいですよ?
屋敷の中に来てください。』
「…。」
『早く行きましょ…、っ…?』
何も言葉を発さない冨岡さんを不思議に思っていると、傘の取っ手を持っている私の手に
雨で冷えた冨岡さんの冷たい手が添えられた。
「俺の屋敷に…来てくれないか…?」
『でも…、屋敷まで少し距離が…』
「お前と2人だけで話したい…。
この前ような事はしないと誓う…、
だから……頼む…。」
『わ、分かりました…』
冨岡さんの綺麗な目でジッと見つめられながらお願いをされると、私はいつも断れなくて…
素直に了承すると、冨岡さんは私からスッと傘を奪い、代わりに差してくれて屋敷に向かって歩みを進めた。
恋人と相合傘をするのも私は初めての体験で…
冨岡さんとの近い距離に緊張した私は
体が触れないように少しだけ離れようとしたけど、冨岡さんの腕が肩に周り、離れる事を許さないかのように、グッと引き寄せられた。
「濡れないように…、俺から離れるな。」
『っ、は、はい…』
隣を歩いている冨岡さんは
雨で全身ずぶ濡れだけど、それが逆に色気を感じさせてくる。
私より少し背が高い冨岡さんをチラリと見ると
横顔がかっこよくて、尋常じゃないくらいドキドキする…
私は、自分の煩過ぎる心拍を感じながら
雨の中ずっと無言で歩き続けた…。