第15章 潔白
『あなたの事は…恨んでもないし
憎んでもいませんよ…。』
「っ、そんな嘘…つかないで下さいよ!!」
『本当に嘘じゃないです…。だって…
あなたを憎み、恨んだところで何も変わらない…、
私の噂話が無くなるわけでもないし
あなたにも…、これ以上傷ついて欲しくないんですよ…。』
「っ……」
鬼狩りの任務で負傷したこの人は
まだ傷口がかなり痛むはず…。
それに加えて、私の事で悩ませて
心労をかけさせたくない…。
1日でも早く復帰できるようにサポートするのが、私の仕事の一環でもあるんだから。
「そんな綺麗事ばかり言ってるから…
今みたいな状況を生み出し、苦しむ羽目になったとは思わないんですか?」
『確かにそうかもしれませんね…。
でも、こんな私を大切に想ってくれて
信じてくれる人がいるんです。
どんなに辛くても苦しくても
その人が私を支えてくれる…、助けてくれる…、
そばにいてくれる…。
だから私は、自分らしさを失わないようにしようって…そう決めたんです。』
今回の噂話や
謹慎させられた事は、私一人じゃどうにもならなくて、もう諦めようって思ってたけど
数日前…、
私は一人じゃない、って冨岡さんが気付かせてくれたから…
頼りになる人がいてくれることで
すごく心強く思えたし、今の私ができる範囲の事を精一杯やろうって…、冨岡さんのおかげで、そう思い直して立ち直ったんだ。
「はぁーー…
本当に……さんって変わってますね…」
『…そんな風に言うなら食事下げますよ?』
「だめです。俺、今めっちゃ腹ペコなんですから。」
『だったらいつまでも喋ってないで
早く食べて下さいね。』
隊士の人にそう伝えたら
彼は黙々と食事をし始めて…
先程と同じように
食べ終わる頃に食器を下げに来ると伝えて、私は病室を出た。
『ふぅ…、よしっ!!次の仕事しないと!』
隊士の人に私の気持ちが伝わったかどうかは分からないけど、言いたい事は言えてだいぶスッキリした私は
その後も、翌日も……屋敷内を忙しく駆け回り
様々な仕事をこなしていった。