第12章 真意
額や頬、左右の目元など
順番に優しくキスが落とされて……
「少し…口を開けれるか…?」
『…っ』
黙ったまま頷いた私は
言われた通りに口を半開き状態にすると
すぐにキスで唇を塞がれて
冨岡さんの少し開けられた口から
暖かい舌がゆっくりと私の口の中へ侵入してきた。
同じように
私も自分の舌を差し出そうとした…
でも、その瞬間…
「失礼致します。
隊服と羽織ものが洗い終わりましたのでお持ちしました。」
『!!』「!!」
襖の外からお婆さんの声が聞こえて
私と冨岡さんはすぐにパッと体を離して距離を取った。
……人様の屋敷で私はなんて事を!!!!
冨岡さんの恋人になれたことで浮かれまくってたから、私達以外の人の存在なんて
全く気にしてなかった…。
キスで熱った頬の熱を感じていると
お婆さんが私の隊服と冨岡さんの羽織りを持って、部屋の襖を開けていた。
「…おやおや、お邪魔でしたかねぇ。」
『いっ、いえ!邪魔だなんてとんでもない!!
私達別に何もしてませんでしたから!!』
「おほほ、ですがお二人とも
お顔が真っ赤になっていらっしゃるようですが。」
『…っ、だから…これは…そのっ…』
「…、言い訳をしたところで意味はない。
墓穴を掘るだけだ。」
『うぅ……』
お婆さんのニヤニヤした視線によって
益々私の顔は熱くなってきていた。
「ふふっ、若いとはいい事ですねぇ〜。
では、服はこちらに置いておきますので
お二人でごゆっくりなさって下さい。」
お婆さんは笑顔のまま部屋の襖を閉じ、
私と冨岡さんは再び部屋に2人きりとなった。
『足音も気配も全くしなかった…
あのお婆さん凄いですね…。』
「あぁ…。
今後は2人きりの時だけにしておこう。」
『ですね…。』
さっきまで大胆な事をしていたのに
お婆さんの登場によって私と冨岡さんは冷静になり…
その後は
時間の許す限り私達は会話だけを楽しんだ。
キスをしたり
抱き締め合うのも幸せだったけど
一緒に居て話すだけでも幸せで…
これからも、2人で過ごす時間が
たくさんできますように…と、私はそう願った。