第12章 真意
冨岡さんに約束をして貰ったところで
私は元いた時代の自分の事を全て話した。
お父さんが雪崩で亡くなって
お母さんが精神を病み、色んな男の人と恋人になり
異常なほど男性に依存し続けていたこと。
そんなお母さんも薬物中毒の男に殺されて
家族が誰1人としていなくなってしまったこと。
身内がいなくなった事で
せめて病院での仕事を頑張ろう、と思っていたら
お母さんのことが病院内で噂になり
仕事をクビになったこと。
どれだけ弁明しても誰にも信じてもらえなかった私は、人生に絶望して、生きる意味を見出せなくなって…
自ら命を絶つ為、病院の屋上から飛び降りたこと。
そして気がつくと
何故かこの大正時代にきてしまっていたこと。
最後に、冨岡さんの気持ちに応えられないと言ったのは、自分も死んだ母親のように、男の人に依存し
周りが何も見えなくなるほど恋に溺れて
冨岡さんに嫌われるのが怖くなったから…
母親と同じ血が流れている自分に嫌悪感を抱き、こんな私は冨岡さんに相応しくない……、そう思っていたと説明した。
私が話をしている間
冨岡さんはずっと黙ったまま聞いていた。
『母の事や、自殺した事をお話ししたのは
冨岡さんが初めてです…。
ずっと隠し続けて…、
先日は冨岡さんを傷付けてしまって…
本当にすみませんでした…。』
「…。」
…返事がない、怖い。
やっぱり自殺した女なんて嫌だよね…
男にだらしなかった母親の娘なんて、受け入れられないよね…
半分諦めた気持ちになりながら
冨岡さんが何か言ってくれるのを俯いて待っていると、冨岡さんが動き出す気配を感じて、私は咄嗟に目を瞑った。
ギュッ
『…。えっ…』
…一瞬、何が起きているのか分からなかった。
冨岡さんは膝立ちに体勢を変えて
私の体を強く抱き締めていたんだから…。