第12章 真意
『ふー……、お風呂気持ちよかった〜。』
「お湯加減はいかがでしたか?」
『あ、はい!丁度よかったです!』
「では、洗った隊服が乾き次第
お部屋にお持ちしますので、ゆっくり御寛ぎ下さい。」
『何から何まで申し訳ありません…』
「いえいえ、お気になさらず。」
…私は現在、藤の花の家紋の屋敷にいる。
夜中はずっと鬼殺の任務、
伝令を受けてから全速力で走り続け
終いには冨岡さんの胸でひたすら泣き続けて…
かなり体の疲労が蓄積していたのを冨岡さんに見抜かれ、蝶屋敷や冨岡さんの屋敷よりも近い場所にあったのが
ここ、藤の花の家紋の屋敷だった。
休ませて欲しい旨を屋敷に1人で住んでいるお婆さんに伝えると、快く迎え入れてくれた。
しかもわざわざ任務帰りの私を気遣ってお風呂を沸かしてくれたり、少し汚れた隊服も洗ってくれるそうで…
まさに至れり尽くせりの手厚いおもてなしで
申し訳なさを感じながら、私は隊服の代わりに浴衣を身に纏い、用意してもらった部屋へ向かった。
襖を開けて部屋に入ると
冨岡さんは障子が張られている窓を開けて
外の景色を眺めていた。
「…風呂、出たのか。」
『はい…、あの、冨岡さん…
羽織りを汚してしまって…すみませんでした…』
さっきまでずーっと
冨岡さんに抱き締められながら泣いていたことで、冨岡さんの羽織りは私の涙と鼻水で汚れてしまい…
その羽織りも私の隊服と同様、
お婆さんに頼んで一緒に洗って貰えることになった。
羽織りを脱いだ状態で
隊服だけを着ている冨岡さんを見るのは
稽古をつけてもらった雪の日以来なんだけど…
……似合い過ぎてやばい、
めちゃくちゃかっこいい。
隊服姿を見ただけで
ドキドキしていることを悟られないように気を付けながら、私は改めて謝罪をした。
「謝る必要はない、洗えば綺麗になる。」
『でも…、羽織りを汚しただけじゃなくて
私…ずっと泣きっぱなしで……』
「俺が好きなだけ泣けと言った、
だから気にしなくていい。」
『はい…』
冨岡さんはそう言ってくれるけど
面倒くさい女だって思われてないかな…。