第10章 突風
『あ、そうだ…!
ここに来る途中、手土産を買ってきたので
良かったら召し上がって下さい。』
「あ…?ンなもんいらねぇよ。」
『えー…。
凄く美味しそうなおはぎだったのに…。』
受け取ってもらえなかった事を残念に思い肩を落としていると、不死川さんの肩が一瞬ピクリ、と動いた。
ひょっとして、甘い物嫌いだったのかな…?
「チッ…、適当な場所に置いとけ。」
『えっ…、あ、はい。』
…良かった、好きなんですね、おはぎ。
これからこの人に稽古をつけてもらう時は
毎回おはぎを持ってきた方が良さそう。
そんな事を考えながら
中庭の近くの縁側におはぎが入った袋を置くと
私の足元に木刀が転がって来た。
「サッサと始めるぞ、早く来やがれ」
『は、はいっ!!……うわッ…!?!?』
木刀を拾い、少し間合いを取って木刀を構えた瞬間、不死川さんは風の如く動き、いきなり強い力で打ち込まれた。
『くっ…ぅ…』
「反射神経はいいようだなァ…
だが俺は、手加減する気なんてねェぞ?」
『わっ…、わっ、…ッ!!』
無闇矢鱈に木刀を振り回し
連続技を仕掛けてくる不死川さんは
本当に手加減する気がないようで
私はガードするだけで精一杯だった。
「フンッ…、胴がガラ空きだぞォ!?」
『ぐっ…!?カハッ…』
木刀で受け止めようとしたけど間に合わず
咄嗟に後ろに跳んだけど、攻撃のダメージをゼロには出来なかった。
これは……本気で挑まないと死ぬかもしれない…。
「ほらほらどうしたァ!?かかって来やがれ!!」
『うっ…』
不死川さんの攻撃は速いだけじゃなくて威力も相当。
風柱と言われているだけあって
本当に風を切るような動き…
それでも私は諦めずに
この人のスピードについて行こうと、自分も攻撃を仕掛けて行った。
只管打ち合う稽古…
その名の通り、私と不死川さんは
しばらくの間木刀を打ち合い続けて…
どれだけの時間が経過したかなんて
気にする余裕は全くなかった。