第9章 修練
「…西口と言ったな?
お前のお陰で、への気持ちを理解出来た。…感謝する。」
西「えっ…、自覚してなかったんですか!?
水柱、何度も俺に威嚇してましたよね!?」
「そうだったか…?悪い、無意識だった。」
西「えぇぇ……」
思い返してみたら
西口がを見つめる時の目は
仲間に向けるものとは違っていたな…
…あれはに好意があったからだったのか。
の美人面を誰にも見せたくなかったのも、アイツを想う男を増やしたく無い、と思っていたからだったんだな…。
恋というのは
自覚がなくてもそんな事をしてしまうのか…
…実に恐ろしいものだ。
「先程の話だが…
に告白をするのはお前の自由だ。
止める気はない。」
西「分かりました。
…俺は、貴方よりも剣の才能はないし柱でもない一隊員ですが、同じ男として、水柱には負けません。
さんの事は絶対に諦めたりしませんから!」
「…。奇遇だな、
俺もお前には負けるつもりはない。」
西口にそう伝えた俺は
その言葉を最後に蝶屋敷を後にした。
西「あーっ、くそ……ッ、
敵に塩送ってどうすんだよ〜…、俺の馬鹿…!!」
西口の独り言は
しっかりと俺の耳にも届いていたが
聞こえていないふりをさせてもらった。
何を言い返せば分からなかったし
西口には、への気持ちを気付かせてくれた恩がある。
悪い男では無いとは思うが
奴がの恋人になってしまうのは
想像しただけで耐え難い。
…他の男に取られるくらいなら
俺はに己の気持ちを伝えた方がいいのだろうか。
そんな考えが浮かんだ瞬間
御館様に言われた事を思い出した。
"君のその気持ちは
例え美緒じゃなくても不快に思わない…
寧ろ嬉しいと思うはずだよ。"
「御館様は…疾うに気付いていらしたのか…」
俺自身が全く気付かなかったというのに…
あの御方には敵わないな…。