第8章 死神と水の呼吸
それからか柊が用事で屋敷の中を移動する度に義勇はてちてちと後ろをついてくるようになった。
(どうやら懐かれたようだ。)
内心笑いながら義勇の表情を盗み見る。
(何を考えてるかはわからないが。)
「柊。今夜は任務が入ってる。ここから近いそうだから一緒に行くようにと司令がきた。」
「…義勇、その司令は今来たのか?」
「??今朝だが。」
こいつ今何時だと思っているんだ?もう夕刻も近い時間だ。
「…何故もっと早く言わない。」
義勇に協調性が芽生えたと感じたのは気のせいだった。明後日の方を見る義勇の目を見ると柊は諦めてため息をつく。
「柊、この任務でお前の水の呼吸がどの程度実戦で使えるかを確認する。」
「そうだな。すぐに出立の準備もしないとな。君は準備万端みたいだが、『今!』任務の話を聞いた私はまだ隊服も着ていない。次からは2人で行く指令が入ったら『すぐに』声を掛けてくれると助かる。」
笑顔で皮肉たっぷりと所々に強調して話す柊だったが、義勇にそれは通用しなかったようで柊の笑顔を見てムフフと笑い返すだけだった。
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任務は滞りなく終わった。水の呼吸もしっかり使えて死神の力も出さずに鬼の頸を斬ることができた。
走って帰ろうと思えばできるが、雲行きが怪しいため近くに藤の家紋の家があるらしくそこで一晩過ごす事にした。
「夜更けにすまない。食事は必要ない、寝床だけあれば構わない。」
「鬼狩り様、ようこそいらっしゃいました。朝食はご用意させていただきますゆえ、ごゆるりとお身体をお休みになられてください。」
部屋を一つ、布団は二組用意してもらう。
「…柊、一緒に寝てもいいか?」
濡れた手拭いで簡単に体を拭いたとはいえ湯浴みをしていない状態だ。少し渋ると義勇の瞳が揺れる。
「嫌ならいいんだ…。」
「嫌ではない、ただ任務の後だから汗の匂いが…」
「俺は気にしない。」
まぁ本人がいいというなら構わないか。
柊は再び義勇と同じ布団で寝る事にした。