第8章 死神と水の呼吸
義勇side
『俺は柱ではない』
その言葉はまさに呪いだ。
最終選抜で俺は鬼を一体も倒してない。ずっと逃げ続け怪我をし、気を失い気づいたら合格者として鬼殺隊に入っていた。錆兎という大事な友人を犠牲にして。
俺が呑気に布団で寝ている間に錆兎は異能の手鬼に殺された。それから俺はがむしゃらに刀を振り続けた。
いつの間にか柱の条件を満たしていたが俺は果たして柱と呼ばれるような器なのか。錆兎こそ柱に相応しい男だったのに。俺があの時怪我をしなければ、強ければ、そう考えると泣きそうになる。
義勇、君は布団で寝ないのか?」
「…怪我や病気以外で寝ることはない。」
「…眠るのが恐ろしいか?」
柊と柱の話をしたからだろうか、久しぶりに夢を見た。
俺を逃すために死んだ蔦子姉さんと錆兎の夢だ。
柊が一瞬、姉さんに見えてつい甘えてしまった。
布団で寝ると夢を見てしまう。2人が死ぬ夢。守れなかった部下、同期、仲間。きっと目の前の柊もいつか死んでしまう。
俺が夜、眠っている間に、知らない場所で彼女もどこか遠くに行ってしまうのだろう。それが恐ろしいんだ。
「無理に話す必要はない。誰にでも言いたくない事もある。だが、私は死なない。君が寝ている間に死ぬことは決して無いと誓うよ。だから安心しろ。」
「っ!!……そうか。」
一番聞きたかった言葉だ。
冷えた心にじわりじわりと柊の暖かさが染み込んでいく。