第7章 死神と蝶屋敷
グッと柄だけになった刀に力を込める。
霊圧を高め呼吸を整える。
すると段々視界が夜の暗闇に変わっていく。
神社の境内だ。
それと同時に刀の刀身も戻り、服も死覇装から隊服に変わり、傷も消える。
目の前に立つ杏寿郎だと思っていたのは紛れもない鬼でニタニタとこちらを笑いながら見ている。
柊は伏せていた視線を鬼に向ける。真っ直ぐに視線を向けたその瞳には恐怖や畏怖と言った負の感情はなく、『頸を斬る』その信念が見て取れる。
その柊の目を見てさっきまでの卑しい笑みはなくなり今度は鬼が畏怖する番だ。
「な…なんでお前…、術が解けて…!」
咄嗟に逃げ出す鬼に向けて
「咲き吹雪け 氷雪の蘭!二の舞!」
氷の花吹雪が舞い降りる。柊が刀の先を鬼に向けるとヒラヒラと空に舞っていた氷の花びらは一気に鬼の元へと流れていく。
「ぎゃぁぁ!!」
氷の花びらが四方八方から体中に刺さっていく。倒れ込んだ鬼に近寄り、刀を頸に当てる。
「残念だったな。貴様の敗因は調子に乗り過ぎた事だ。杏寿郎は私に対して敵意は向けない!絶対だ!」
頸を切り落とす柊。
「最後の杏寿郎さえ出さなければ私は絶望し、お前に喰われていたかもしれんがな。」
ボロボロと崩れていく鬼に最後の言葉をかける。
「しまった!頸を斬ってしまった!生捕りだった…。すまんしのぶ…」
杏寿郎を侮辱された怒りのまま頸を斬ってしまいそこにいないしのぶに謝罪する柊。
「カナヲは?」周りを見るとカナヲが少し離れた場所で地面に倒れている。同じように血鬼術で嫌な過去を見せられたのだろう。
閉じた目から涙が滲み出ている。
「すまない、カナヲ。巻き込んでしまった。」
横抱きに抱え上げると柊は蝶屋敷へ急足で帰る。