第7章 死神と蝶屋敷
蝶屋敷は鬼と戦って傷付いた体を癒したり、機能回復訓練というリハビリを行う施設も担っているそうだ。
柱の中でもしのぶは薬学や毒草なんかにも精通していて、研究を怠らない勉強家だ。
これまでお世話になった屋敷に比べると外観は日本家屋だが、内装は洋風に改装されていて、この時代には珍しい病室にベッドが完備されていた。
私の様な『稀血』についても調べたいが、なんせサンプルが少ないらしい。
しのぶは屋敷を案内しながら簡単に説明してくれた。
ーーてちてちてち。ーーー
「……。」「……。」
しのぶと柊が2人して後ろを振り向く。
「あのー冨岡さん?黙ってるだけならどうしてついてくるですか?ずっと後ろをてちてち歩かれると気が散るんですよ。」
「義勇、何か話があるなら聞くが。」
前を歩く2人から話しかけられるが特に理由も話す内容もなかったので無言を貫く義勇。
「はぁ…、そういうところが皆さんから嫌われるんですよ。」
「俺は嫌われていない。」
「そう思っているのは冨岡さんだけです。」
「俺は…嫌われてない…よな?」
最後は柊に聞いてくる。
「いや、私に聞かれても困る。他の柱や隊士と会ったこともないし、少なくとも私は義勇に対して嫌いという感情はない。」
柊の言葉にムフフと喜ぶ義勇。
(やはり俺は嫌われてない。)
どうやらしのぶの「無関心が一番辛い感情ですけどねー。」という言葉は届いてなかったようだ。
奥の一室に入るとどうやらしのぶの個人的な執務室らしく医学書など難しい本がたくさん並んでいる。
「まずカルテを作ります。わかる範囲だけで良いので答えてくださいね。」
名前から始まり、生年月日、身長体重や病歴を聞かれる。
生年月日か。どうしたものか。うーんと悩んでいると。
「大体で構いませんよ?実際幼少期に両親を殺されて自分の生年月日を知らない人も多いですから。」
「いや、知ってはいるのだが、少し複雑でな…。」
少し悩んだのち意を決し、
「しのぶ、義勇。2人にはこれから世話になる。だから隠し事は無しだ。お館様からは話す話さないは私に一任されている。今から少し私の話を聞いてほしい…。」