第4章 死神と日輪刀
杏寿郎が前田という裁縫担当の隠に何やら呪いめいた手紙を書いていた。
どうやら前科がいくつもあり、元継ぐ子の甘露寺蜜璃という女性の隊服がまさしくこのぱっくり開いた胸元とミニスカートらしい。本人は気に入ったのかそのまま着用しているが、蟲柱の胡蝶しのぶは油をまいて燃やしたそうだ。前田の目の前で。
そうか、女性隊士…存在したのか。
以前詰め所でのお互いの勘違いの連鎖により女性隊士はいない物だと思っていたが、柱になれるほどの実力がある女性もいるのだなと関心する。
日輪刀を届けに来た願鉄は騒ぎの後、他にも寄るところがあると言って煉獄家を後にした。
杏寿郎に隊服と同様に日輪刀もお披露目していると
「カァー!伝令だよー。柊ー。任務だー。南南東ー。南南東ー。初任務ー。頑張ってー。」
「早速だな。行ってくる。」
先ほどまでの穏やかな表情とは一変する。
「リーン。これは俺と父上、そして千寿郎からのプレゼントだ。」
そう手渡されたのは折り畳まれた白い生地。
広げてみると杏寿郎が着ているものも同じような羽織だった。
違うのは色と裾の形だ。
裾の方に青い雪の結晶と蘭の花が散りばめられており、まさしく柊のために存在する羽織だ。
「とても綺麗だ。ありがとう。大事に…する。」
袖を通すと丈もピッタリで、いい生地を使っていることもわかる。
見送ってくれるらしい杏寿郎が柊の後ろを歩く。
表門のすぐ手前でピタッと歩みを止めると後ろを振り向きそのまま杏寿郎に抱きつく。
「杏寿郎。」名前を呼ぶだけで何も言わない柊に杏寿郎がとうしたと問う。
「やっとここまで来た。ここからが始まりだ。私はこの世界でも戦い続けるよ。君の隣で、君の誇りを守れるように。だから、信じて待っていてほしい。」
ふんわりと笑いかける柊の笑顔に見惚れる杏寿郎。
「では行ってくる。見送りはここまでで大丈夫だ。杏寿郎もしっかり休め。」
そう言って体を翻し、門をくぐり任務地へと向かって行った。
「あの笑顔は反則だろ……//」
口元に手を当て顔を赤く染めしばらく立ちつくす杏寿郎。
そこに学校から帰宅した千寿郎がどうしたのかと不思議そうに声をかけるのだった。