第3章 死神と藤襲山
「父上とも相談したのだか、君を最終選別に推薦しようと思っている」
私が全集中の呼吸を習得した翌日の朝、いつもの鍛錬を始めようと身支度を整えた後、杏寿郎が真剣な眼差しで伝えてきた。
「最終選別?」名前から聞くと恐らく鬼殺隊に入隊するために何か試験があるのだろう。命懸けの仕事だ。筆記試験なんて事はないだろう。御前試合のような剣術を見極める実技試験だろう。
「うむ。鬼の嫌いな藤の花が年中咲き続ける藤襲山という場所に鬼が数体閉じ込められている。その山の中で7日間生き残れば合格だ。」
「、、は?なんだその無謀な試験内容は、、。」
鬼の活動が夜だけとはいえ、電気もない山の暗闇は相当な神経を使うだろう。
更に私は稀血。少しでも傷を負えば鬼を集めてしまう。
「最終選別はいつだ?」
「3日後だ」
「来年でもいいと俺は思ったんだが、リーンの実力なら大丈夫だと判断した。」
どうやら年に一度の最終選別試験は夜が一番短い日、夏至の日に行うらしい。少しでも鬼よりも有利になるようにとの配慮だ。
何より藤の花の季節は4月から5月。いくら年中咲き続ける藤襲山でも季節外れになると香りが劣るのだろう。
「選抜では鬼は倒しても倒さなくてもいい。ただ、7日間生き残ればいい。だが君は稀血だ。見かけた鬼は殺した方が得策だな。」
「そうだな。だが私の斬魄刀では鬼の頸は切れない。一の舞で凍らして放置させるか。」
「そう言うと思ってな!これを使え!」
そう言っておもむろに取り出したのは刀身が短い刀だった。
「これは脇差しだが鬼の頸を切れる日輪刀だ。リーンの戦い方は斬魄刀だ。だがそれだけでは鬼は斬れん!二刀流とまではいかんが鬼のとどめはこちらで斬れ!」
「ありがたく頂戴する」
藤襲山へは歩いて1日はかかるらしいので明日の朝出発する事に決まった。
だからか、今日の夕食は少し豪勢だ。けれども誰1人不安や心配なんて空気は出さなかった。それだけ柊の事を信頼しているのか、それともこれが煉獄家なりの激励なのか。
楽しそうに笑いながら食事をする煉獄家の姿に柊も和やかな気持ちになるのであった。