第17章 死神と潜入捜査
年の瀬が近づいてきた頃、御館様より一通のお手紙が来た。
それは年末に行われるパーティへの潜入捜査の任務についてだった。
受けるのなら詳しい話は後日、とのことなので約束の日、柊はその話を受けにとある屋敷へ訪れた。
すでに待ち構えていたのは天元で、彼は柊の姿を見て驚いた。
「おい、まさか潜入捜査に抜擢されたのは姫さんじゃないよな?」
「御館様から直接お手紙が来たんだ。断るわけなかろう?」
「…だよなぁ。あー確かに…適任っていやぁ姫さんくらいしか思い浮かばねぇか。」
「そんなに危険なのか?」
「それがわかんねぇから不安なの。とりあえず概要、説明すんぞ。」
天元の話によると年末に国の外交が絡んだ船上パーティがあるらしく、どうやらその船に鬼を潜伏させ海外にも鬼の脅威を及ばせようと画策しているかもしれないとの話だ。
鬼が独断で潜伏するのか、鬼舞辻無惨が紛れ込み、船上で鬼化させるのかは不明。ただ、どちらにせよ鬼が日本を出てしまうと鬼狩りの手から逃れ世界の危機に陥ってしまう事は確かだ。
ただその船上パーティは外交目的のためセキュリティーが厳しく鬼殺隊を何人も忍び込ませるのは困難なのだ。
ある程度英語に覚えがあり、洋装に慣れ、大人で、気品もあり、顔や体の目立つ場所に傷痕がない女性。
「それが私だと?」
「姫さん英語は?」
「ある程度の単語は理解できる。前の世界ではここよりずっと外国との合流が盛んだったからな。…だが会話となると…いささか不安ではあるが…。」
文字や看板が英語表記が増えてきた都会に向けて何度か英語の講習会を受けたことはある。だがそれも自ら望んで受けたものではなく、各隊の隊長から4席の中から1人、5席から10席から2人選ばれた者。そして3席の私が一番年若いと理由で参加させられたのだ。講習の内容もちんぷんかんで、外国の文化や主な挨拶などを話していた気がする。
ちなみに今の霊術院では『外国』という科目が増えており、必須になっている。
「もう少し真面目に話を聞いとけば良かった…。」
「何が?」「…こっちの話だ。」
「で、潜入は私と天元が2人でパーティに参加すればいいのか?」
「いや、俺は今回裏方だ。考えてみろよ!この俺がパーティに出れば目立っちまって潜入にならないだろぉ?」