第15章 死神と科戸の風
山の紅葉が次々と落ちてゆき冬めく季節になった頃、柊は遂に柱の一つ下の階級、甲(きのえ)まで上り詰めた。
水柱・炎柱のそれぞれとの連携は凄まじく、先頭に立たせても、後方支援に回らせてもその実力は誰もが認めるものとなってきた。
特に驚かせたのは音柱との任務だった。現在音柱の部下である嫁の3人は長期任務のため潜入中で人手が足りていない。そんな中彼が柊を指名してきたのだ。
指名した理由は主に杏寿郎を揶揄う目的と下心が半々、剣術もできるし何より水の呼吸は静かだ。
何かしら役に立つだろうと軽い気持ちで連れてきたがその思惑は『いい意味』で大きく裏切られた。
柊は鬼道で姿を見えなくしたり、印をつけた人間の行き先がわかる術を使ったり、一番驚いたのは天挺空羅という頭に直接響いてくる声だった。
だがこれは今は緊急や非常事態だけらしく、どうやらこの世界ではごっそり体力が持ってかれるらしい。
そうして丸2日間、柊は天元と共に関東中を周り、怪しいとされる噂の場所を本部に伝えると言う激務を終わらせた。
天元とはそのまま東海地方も見てくると言って別れを告げた。
「指令ー!指令ー!任務だよー!この先の山に逃げた鬼が潜伏したよー!」
チャクラが減っているが気にしてる場合ではない、死神の能力を使わなければなんて事ないんだ。
気を引き締めると柊は前方に聳え立つ山へと駆け出していく。
11月中旬だが流石に山の上だと凍てつく寒さだ。
「逃げた鬼か…手負いならまず回復のために人間を探すだろうな。」
冷静に鬼のむごい思考を読み解いてしまう自分がつくづく嫌になる。
「こんな広い山で鬼を探せなんて無茶だろ。追いかけてきた隊士がいるはずだな。まずはそっちと合流するか…。」
ーーゴオォォォーーー激しい風の音がする。
「なんてわかりやすい。あっちだな。」
数分もせずに辿り着いたが、そこには何もなかった。そう、何も。
そこ一帯が木や植物が根こそぎ薙ぎ倒されていて吹き飛ばすように周りに散乱していたのだ。
「これは…後藤が言っていた風の呼吸…?確かに台風だ。」
そしてさらにーーードーーーン!ゴオォォォ!ブワァァァ!ーーー
激しい音が次々と場所を変えて鳴り響く。