第13章 (短編)雪白姫の噂
「やぁ後藤!…殿。この間はありがとう!」
「…リーン。」
2度目の再会はわずか3日後だった。
「鬼は?」後藤が聞くと「もう倒した。」あっけらかんと答える柊。
「は?早過ぎんだろ!ってかほんとに戦ったのか?全然戦闘の跡ねぇじゃねぇか。」
「痕跡を残さないようにするのが得意だからな。」
「まぁ、仕事がし易くて俺らは助かるけどよ…。」
「前回の集落で気づいたんだ。鬼を倒すだけじゃだめだ。そこで暮らす人たちの未来のことも考えなければならないって。鬼がいなくても家がなくなれば立ち行かなくなる。できるだけ最小限の被害で済むように手を尽くそう。」
「その言葉、柱に言って聞かせたいわ。」
「私の知ってる柱なら伝えておこう。」
「いやいや!何言ってんだ!バカか!やめろ!柱怖えんだぞ!しらねぇのか!」
「そうか?私の知ってる限り皆優しくて寛大だが。」
「ちなみに誰?」
「炎柱、蟲柱、水柱の3人だ。」
「あぁ。まぁ比較的その3人は無害だな。それにそこまで派手に戦う人たちじゃないから後始末も楽だし。」
「へぇ。呼吸によるのか?それとも使い手の性格か?」
「どっちもだと思う。特にひどいのは岩柱と風柱だ。どっちも力技でゴリ押しだから。風柱なんて台風が通り過ぎたのかってほどめちゃくちゃ。」
「ふふ、なんなとなく名前で想像つく。」
げんなりした顔をする後藤に柊は笑う。
その顔を後藤はじーっと、見ていると。
「なんだ?私な顔に何かついてるか?」
「いや、やっぱあんたは儚げ美人なんかじゃないなぁ。って。」
「?どういう意味だ?」
「なんでもねぇよ。じゃ、作業も済んだしリーンもさっさと帰んな。」
(雰囲気がそうさせるけど笑うと普通に可愛いんだよチクショウ!)
そうして後藤は当分の間柊の担当隠へとなった。
更に隠ABCの3人は別の現場でも『雪白姫』について書き出すつもりが逆に広めてしまい、隠どころか隊士にまで噂が広がるとは思いもせず、無闇に仲間の情報を拡散するなと上から絞られたのは別の話。
おわり。→あとがき。