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死神の華【鬼滅の刃】

第12章 (短編)ある日の話(槙寿朗)※


任務として向かった先が鬼ではなくガセネタだったと分かり早々に煉獄家に帰宅した柊。それでも寝静まる夜だった。

杏寿郎も別の任務へと出ており、千寿郎は規則正しい生活なので遅くても夜9時には夢の中だ。
一度寝ると余程のことがない限り目を覚ます事はないが、それでも柊は起こさないようにと静かに屋敷に入り、入浴を済ませる。

ふと奥の部屋に目をやると槙寿朗の部屋の明かりがついている。
まだ起きているのか。そう思いながら柊は自室に戻る。

今回の任務の結果を報告書にして書き終え、引き出しにペンを戻すとその中にある携帯用の薬籠が目に入った。

「そういえば…忘れていたな。」


ーーーーー数日前ーーーーーー




それは定期的に体や稀血の研究のために蝶屋敷を訪れた時のこと。


「柊さん、これ、よかったら使ってください。」
そう言われて手渡されたのは可愛らしいデザインの薬籠だった。
薬籠を開けるとマリーゴールドの華やかで、そして僅かに薬草の香りがするクリームが入っていた。

「これは、軟膏か?私は特に怪我はしていないが。」
「ふふ。これは傷跡に塗るものです。柊さん、背中の傷がとても痛々しいので。お節介かもしれませんが、是非使ってれませんか?とても古い傷跡なのでどこまで効果があるか分かりませんが…。」

「自分ではよく見えないし、あまり気にしたことはないのだが…。」
柊がやんわりと断ろうとすると
「いいえ、とーっても気にする方がいるんです。前々からお願いされていて、彼を黙らせるためにもちゃんと塗ってくださいね。」

彼と言うのは十中八九杏寿郎の事だろう。
私の背中を触れるたび凹凸のあるケロイド化した傷跡に優しく触れ、舐め上げてくるのだ。その光景を思い出し、頬を赤く染めていく。

「はいはい。ご馳走様です。お風呂上がりにしっかり塗り込んでくださいね。無くなったら言ってください、すぐに用意できますので。」

「わかった。ありがとうしのぶ。」


ーーーーーーーーーーーー


そしてそのまま机の引き出しに仕舞い込んでしまっていた。

折角調合してくれたんだ、塗ってみるか。

浴衣の上だけをはだけさせ、薬籠の蓋を開けたところで

「背中、見えないな…。手もかろうじて届くが…。」



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