第11章 死神と熱
「師範!っあ、柊さん…ごめんなさい…。」
「はぁ、はぁ、いや、大丈夫だよ。カナヲは体を拭いてくれてただけ。私が…その…勝手に反応してしまった。すまない。見苦しいとこを見せてしまった。」
「カナヲ、柊さんの食事を持ってきてくれますか?」
「っ!はい!すぐに!」
パタパタとカナヲは部屋を出ていく。
「全く…柊さんは男も女も惑わせてしまうんですから。」
「そんなつもりはないのだが…。」
しのぶはため息を付くと柊の額に手を当てる。
「熱はだいぶ下がったみたいですね。それでも無理は禁物ですよ。3日は安静ですからね。鍛錬は勿論、こっそり殿方と激しい逢瀬なんてしないでくださいね。」
「わかってる。」
「今日は清拭で済ませましたが、このまま体のだるさも無ければ明日からは湯船に浸かれます。食後の薬も持ってきたのでちゃんと飲んでゆっくり寝てください。」
そのタイミングでカナヲが食事を持ってきた。テーブルに置くと2人は部屋を後にした。
消化に良い献立を食べ終え、薬も飲む。昼間たっぷり寝たにも関わらず眠気が襲ってくると柊は布団に潜り込む。思ったよりもこの世界に来てから休養ができてなかったのだと感じる。
この世界に来て2ヶ月ほどだが怒涛の日々だった。
そんな思いを馳せながら柊は眠りに落ちた。
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それから4日ほど蝶屋敷に滞在し、柊はすっかり体調が良くなったので退院する事となった。
「柊さんは病気や毒に耐性がないのでくれぐれも気をつけてくださいね。これまで毒の血鬼術を使う鬼と出会わなかったのが不思議なくらいです。」
死神は病気にならないので細菌やウィルスに対する抗体が全くないので人よりも病気になりやすい可能性があるらしい。
入院中、しのぶから解毒方法や薬草などの本を渡され勉強したのだ。
「柊さんまたいつでも来てくださいね!できたら怪我や病気以外で!」三つ子がぴょんぴょんと跳ねながら柊の手を握る。
「そうだな。できるだけそうならないように善処するよ。」
ふわりと笑いながら3人の頭を撫でてあげる。
そして柊は蝶屋敷のみんなに手を振り水柱邸へと帰っていった。