第11章 死神と熱
脱衣所に降ろすと義勇は素早く服を全て脱ぎ捨て、腰に手拭いを巻くとそのまま柊の服にも手をかける。
上半身は動くので柊はそれを制しようと身をよじる。
「ちょ、待て義勇!何故一緒に入るのだ!」
拒否する柊に義勇は無言でまた足をつつく。
「…っっあぅっ!」
柊の力が抜けたところを狙って服は脱がされていく。
柊の背中が露わになったところで義勇の手がピタリと止まる。
震えながら柊の背中に手を触れ、
「柊…、これは?」
義勇が示す『これ』とは杏寿郎が2日前に付けた赤い跡だ。
よく見るとうなじや首筋、腰、胸、太ももと至る所に付いている。
「それは…杏寿郎が…」
恥ずかしそうにそういうと、
「煉獄が来たのか?」
ふと柊の横顔を見ると結い上げてる髪の束から真珠のがチラリと見えた。
よく見ると髪紐に色が見える。その色はまさしく煉獄の色。
「最後まで?」
そう聞くと頬を赤く染めて柊はこくりと頷く。
「…ならもう遠慮はしなくて良いな。先日は煉獄に気を遣って素股で我慢したんだ。言ったろう?次は最後まですると。」
いつも感情が読めず水面の様な静かな義勇の瞳が熱く熱を孕んだ目で柊を捉えると柊の柔らかな唇を奪っていく。
浴室に入り、まず柊を熱い浴槽に入れると義勇は汚れた体を流していく。鍛え抜いた美しい義勇の体に石鹸の泡とともにお湯に流れていく様子に柊は見惚れている。
「…柊。見過ぎだ。」
「…すまない。」
見ていた事を指摘されて義勇と反対の方を向いて湯船に浸かり、恥ずかしさを隠すように膝を抱える。もう痺れは治っていた。
頭も体も洗い、サッパリした義勇も湯船に入り、柊の背後から包み込むように抱き寄せる。
「家主が留守の中、他の男を家に上げ、情事に耽るなど柊はとんだ淫乱だな。」
「そんな事は…」ない。と言い切れない。実際杏寿郎は一度帰ろうとした。だがそれを断って誘ったのは柊自身だ。
それに杏寿郎だけでなく天元とも体を重ねたのだ。