第11章 死神と熱
弥生が作った昼食をいただき、昼の稽古を始めようと庭に出ると屋敷へと人が入る気配がする。
てちてちてちと独特な足音は1人しかいない。
庭から直接玄関の方へ回ると
「おかえり、義勇。」
「…ただいま。」
「私の出番はなかった様だな。怪我はないか?」
「…ない。」
家に帰宅して気が緩んだのか一気に疲労と眠気が来た様でフラフラと歩み寄る。
「義勇っ!大丈夫か?弥生殿ー!!すまん、風呂の用意を頼む!」
「あらあら、冨岡様おかえりなさい、直ぐに用意しますから、もう少し辛抱してくださいね。」
夕飯の下ごしらえをしていた弥生に声を掛け、義勇の体を肩で支えながら居間へと運ぶ。
「少しだけ寝させてくれ…。」
言うや否や義勇は柊の膝を枕にして静かに眠りに落ちた。
汗や砂で汚れているが、その眠る義勇の顔はとても整っていてる。
(鬼殺隊は皆、美男美女だな…。)
柔らかい義勇の髪を撫でながら柊は彼が眠る姿を優しく見つめている。
1時間ほど経つと義勇が目を覚ました。
むくりと起き上がると柊と目を合わせる。
「風呂は沸いてるそうだ。先に入ってこい。着替えも後で待っていこう。」
「…一緒に入ろう。」
「いや、私はーーー」
断ろうとする柊を義勇は無理やり立ち上がらせようと腕を引っ張る。体勢が崩れた柊から苦痛に満ちた悲鳴が発せられるり
「っっうぁっ…まてっ…!」
足を庇う様に畳に手をつき苦悶な顔をする柊に義勇は咄嗟に彼女に寄り添う。
「っ!どうした?!怪我か?足を痛めたのか?!」
焦った義勇はそっと柊の足のふくらはぎに触れる。
「…っっあぁっ!だめっ!!」
義勇はピタリと動きを止める。その声は痛みというよりもどちからと言うと喘ぎ声に近い。
「…痺れたのか?」
柊は1時間もの間義勇の事を足を崩す事なく膝枕で寝かせていたので今までで感じた事ない痺れに陥っていたのだ。
義勇がツンツンと柊の足をつつくとその度に声が上がる。
「っっ義勇っ!やめて…くれっっ…」
涙を浮かべて懇願する柊の姿に義勇は目を据えて一呼吸すると柊を小脇に抱えて上げ、そのまま風呂場へと向かう。