第9章 死神と愛
「少し大きな任務が入った。早くて3日、長くて1週間。その時は柊に応援を頼む。鴉を飛ばすからそれまで柊は管轄内の見回りと近隣の応援のみで基本待機だ。」
朝1番に指令が来たらしく昼過ぎには義勇は出立した。
7月も入り初夏になりジリジリと暑い日が続いていた。
それでも鍛錬はしっかりとこなす。
そんな中一羽の鎹鴉がやってきた。
「要ではないか!久しぶりだな!元気にしていたか?」
よしよしと頭を撫でて足にくくりつけている手紙を取る。
杏寿郎とは手紙のやり取りを続けていた。日常の取り留めもないことだが杏寿郎の言葉は文であっても心が高鳴るのだ。
だがお互い忙しく、鎹鴉を指令や緊急以外で使うのは憚られるため文通は通常の郵便を使っていた。
(この間手紙が来たところだが、なにかあったのか?)
内容を見ると今日、夕刻前に水柱邸に来る。という内容だった。
「はぁ、何故もっと前に言わないんだ?」
義勇もそうだが杏寿郎も大事なことを後で言うことが多い。
今夜は義勇がいないため弥生殿には夕飯は用意しなくていいと言ってしまったし、彼女はもう帰宅してしまった。
そうこうしてる間に門の先から気配がする。会いたかった杏寿郎の気配だ。
先ほどまでの不満は吹き飛び、柊は杏寿郎の元へと走り出した。
「杏寿郎っ!!」
すぐさま柊はその胸に飛び込む。
そしていつものように杏寿郎の匂いを堪能してする。
「柊!元気そうでなにより!」
杏寿郎も負けじと柊を抱きしめ熱い抱擁を交わす。
「丁(ひのと)になったと聞いた!凄いっ!!よく頑張った!父上も千寿郎も喜んでいた!」
よしよしと胸の中にいる柊の頭を撫でる。
「今日はどうしたんだ?急だったが、何か緊急で用事があったのか?」
顔を上げて杏寿郎に今回の訪問の意図を尋ねると庭の縁側へと移動しながら話す。
「本当は当日に渡したかったのだが、明日の夜に任務に出るからな少し早いが柊に直接渡したかったのだ。」
縁側に腰掛け、隣りに座ると杏寿郎は懐に手を入れそれを取り出す。
取り出したものは1本の組紐だった。
橙色と黄色と白で組まれ、紐の先には白い真珠があしらわれていてとても綺麗なものだった。