第27章 また3人で
それから、少しずつ日常は変わった。
収録が終わったあとに軽く話すことが増え、たまに3人で食事に行くようになった。
何年も失われていた温度が、少しずつ戻ってくる。
だけど、それは“元通り”ではなかった。
お互い、どこかで1線を引いている。
笑い合っても昔みたいに自然と肩を並べたり、ふとした沈黙を甘く感じたりすることはなくなった。
そこには、あの頃積み上げた時間を壊してしまった記憶が横たわっている。
ある夜、3人で飲んだ帰り道。
街灯の下で、ふいにキタニが足を止めた。
タ「なあ……。」
低い声に振り向くと、彼は俯き加減に言葉を探していた。
タ「もし、あの時のことがなかったら、俺たちどうなってたんだろうな。」
なとりも立ち止まり、沈黙が流れる。
女は答えられずに夜空を見上げた。
タ「考えても仕方ないけど。」
キタニは苦笑し、ポケットに手を突っ込んだまま歩き出す。
その背中に、かすかな寂しさが滲んでいた。
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別の日、なとりと2人きりになったとき。
彼は酔った頬を赤らめながらも、真剣な瞳で口を開いた。
な「俺さ、今でも……時々考えるんだ。」
「なにを?」
な「もし俺がもっと強ければ、全部守れたんじゃないかって。」
その声は震えていた。
女は
「そんなことない。」
と否定したが、なとりは小さく首を振った。
な「でも結局、俺たち……何も変えられなかったんだよな。」
彼の言葉に胸が痛む。
慰めの言葉も出せず、ただ沈黙が2人を包んだ。