第14章 熱に捕らわれて
タ「……言えないのか。」
キタニの声が落ちる。
その一言で空気がさらに重くなった。
言葉が出ない。
事実を語れば、2人の目の前で自分の全てをさらけ出すことになる。
それは耐えられなかった。
けれど黙っていることもまた、裏切りを証明してしまうようで。
「……ごめんなさい。」
それしか出てこなかった。
沈黙が流れる。
キタニの目が鋭く光り、なとりの手がわずかに震えている。
次の瞬間、キタニがかやの顎を掴み強引に顔を上げさせた。
タ「……答えられないってことは、そういうことだろ。」
その距離の近さに息が詰まる。
反論できずに唇を噛むと、彼は冷たく笑った。
タ「……なら、俺たちにも同じくらい覚悟しろよ。」
その言葉に、背筋が凍る。
意味を理解するよりも早く、彼の唇が覆い被さってきた。
「っ……!」
驚いて手で押し返そうとするが、力は強く抗えない。
舌を侵入させられ、喉の奥まで支配される。
乱暴な熱に翻弄され、呼吸すら奪われる。
な「やめましょうよ、タツヤさん……!」
なとりが慌てて止めに入る。
だがその声にも苛立ちが混じっていた。
タ「……やめる? 本当にそう思ってんのか?」
キタニが唇を離し、挑発するように笑う。
なとりは唇を噛みしめ、視線を逸らした。
その顔には迷いと怒りと、そして嫉妬が入り混じっている。
タ「お前だって気になってるだろ。かやが何をされたか。確かめたくて仕方ないんじゃないのか?」
キタニの言葉は鋭く、なとりの心を突き刺す。
な「……っ。」
なとりの表情が歪む。
その視線がかやに向けられる。
そこには苦しみと欲望と、抑えきれない感情が渦巻いていた。
な「俺は……ただ、守りたいだけなのに……。」
そう呟くように言いながら、なとりの手がかやの頬に触れた。
指先が熱を帯び、震えている。
その優しさがかえって痛い。
タ「守りたい? なら奪えよ。俺がする前に。」
キタニが挑発する。
その声は低く静かで、抗いようのない重みを持っていた。
なとりは苦悩に顔を歪めながらも、かやから手を離さなかった。
むしろ逆に、その距離を縮める。