第1章 初夏
次の日は、降水確率も高く湿った空気が流れ、黒い鉛色の雲からは雨粒が幾度となくアスファルトの地面に叩き付けられていた。土煙にも似た水の匂いは、いつの間にか空気に溶けて混じっていく。行き交う人は色とりどりの傘をさして歩いていた。
「おはよう」
「おはよー」
学校の玄関で、ぐちゃぐちゃに濡れたローファーを脱いで下駄箱にしまった。今日は早く帰って乾燥機で乾かせば明日までには何とか乾くだろう。
「凄いね、靴下」
「あー、今朝車に水溜まり跳ねられてべちょべちょになっちゃった···一応靴下の予備持って来たから履き替えて来る」
靴下がべちょべちょになったのは美佳だった。白いハイソックスが雨水と泥水が派手に飛んでいる。制服のスカートは何とか免れが、ハイソックスだけはこのまま一日過ごすのはきついだろう。
「ちょっとロッカー室に行ってくる」
「わかった。先に教室行ってるね」
美佳と沙也加は別れて、それぞれ向かった。