第1章 初夏
──暑いなぁ。
ジメジメした梅雨の時期に、体に巻き付くような湿気を含んだ気候にうんざりしながら、狩野沙也加は今でこそ晴れているが、所々雨雲をが流れる空を見上げた。
7月の前半と言う事もあり、もうすぐやってくる夏休みに胸を高鳴らせながら、一日一日を過ごしていた。
「沙也加ー!!片付け終わった?」
体育の終了時、倉庫へ使った器具を仕舞いに行った帰りに、空を見上げた時の事だった。
友人の美佳が手を振りながらやって来たのだ。
「え、あ、うん」
「早く行こ?日に焼けちゃう!」
すっと、沙也加の手を握り校舎へと足を向ける美佳に、やや引っ張られるようにして足をむかわせる沙也加。
どこにでもある、平凡な学校生活が崩れるなんて、誰が想像出来ただろうか。