第9章 離れることは許されない
「ですが、今は何の力もないのでしょう?力もなく、一般家庭で産まれたあなたは五条家に相応しくないのです。ましてや、悟と結婚なんてさせられません。」
そうか、由緒正しい家では恋愛結婚は認められないのか。
五条家は悟くんに甘いのだとばかり思っていた。
しかし、結婚のことは譲れないようだ。
「わかりました、出ていきますよ。ですが、説明があったはずです。悟くんが私を溺愛していることはお忘れなく。」
悟くんの心はいつまでも私のものだ。
出ていくと言ったはいいが、私はここから動けない。
悟くんが離してくれないのだ。
そうだ、悟くんのことも伝えないと…。
「悟くんは今、私の名前しか言えません。表情や目を見たり、反応を見てあげてください。わからないからといって声を荒げたりとかはしないでください。好きでこんな風になってるわけではないのですから。」
離して?と優しく悟くんに声をかけるが離す気はないようだ。
じっと蒼眼に見つめられる。
私だって離れたくないよ…でも、私じゃどうすることも出来なかった。
だから、何か手に入れて、堂々とあなたの元に戻ってくる。
私を見つめていた蒼眼は別のとこに向き、私もその視線を辿ると…お粥だった。
お腹空いてるのはわかるけど、今そんな状況じゃ…。
というか、自分で食べれるのでは?
私に視線が戻り、口を開けてくる。
仕方ない、これを食べさせたら…と断り、腕を離してと伝える。
「私が食べさせるわ。」
婚約者がお粥を持ちレンゲを悟くんの口に持っていく。
だが悟くんは口を閉じ食べようとしない。
「ちょ、やめてください!なんでそんなことするんですか!」
閉じたままの悟くんの口にぐりぐりと押し付け始めたので慌ててレンゲを奪う。
そして、お粥が入った器を投げつけられた。
「いっ…!」
まだ熱いお粥が頭からかかる。器は額にあたり、私の身体をコロコロと転がって床に落ち、散らばった。
火傷する程の熱さじゃなくてよかった…。