第5章 縮む距離
私も食べ終わり片付けを終わらせると、おいでと手を引かれて悟くんの胡座の上に座らせられた。
近い、のに…そのほんのり熱を覗かせた燻んだ蒼眼から目を離せない。
「ねぇ、奏音は僕のことどう思ってんの?」
どう…とは?え、私が悟くんを好きってこと?
「…す、すき……だよ…。」
「あ…いや……そういう意味じゃなかったんだけど…ありがとう、嬉しい。」
違うの!?どうしよう恥ずかしい…どう思ってるかって聞かれたらそういうことだと思うじゃん…。
私を見つめていた蒼眼は少し泳いで伏せられ、ほんのり頬が紅く染まっている。
この反応は……私が術を使ったから…。
「僕も好きだよ……奏音が僕を生き返らせてくれたからとか、そういうんじゃなくて…。」
こんな風に弱々しく言葉を紡ぐ悟くんは知らない。
喋れなかった時とは違う、恥ずかしがってる。
悟くんは誰にでも簡単に甘い言葉を吐けるのかと思っていた。
「廃人になった僕を嫌な顔なんてしないで、いつも笑顔で世話をしてくれたでしょ?上手く身体は動かせないし喋れないし…でもそんな君に触れたくなった。」
身体を動かせるようになってからよく私に触れてたのは…。
伏せていた瞳を見せて真っ直ぐ見つめてくる。
「健気に僕を診てくれる奏音を好きになったんだよ?術のせいもあるかもしんないけどさ、奏音を好きなのは、本当の僕の気持ち。」
唇が触れてすぐに離れる。
目が覚めた時は私を好きなわけじゃなかったの?
ちゃんと私を好きになってくれた理由があるのが嬉しかった。
術のせいじゃなくて、その瞳で見た私を好きになってくれていたんだ。
今までキスはいっぱいされるし、可愛いとか彼女とか結婚とかいろいろ言われたけど、好きって言われたことはなかった。
「あ、あの…ありがとう……でも、先に確認したいことがあって…。」
なに?と頬を撫でられて、気持ちよくて自分から擦り寄せてしまう。
聞きづらくてその手に頬を寄せたまま黙っているが、悟くんはじっと待ってくれている。