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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第11章 生きるために剣を振れ 【冨岡編 第1話】


数日が経ち、痛みはまだ残るものの、ようやく歩ける程度には回復していた。廊下の先からは子どもたちの賑やかな声が聞こえてくる。彼女たち――きよ、すみ、なほの三人娘は、甲斐甲斐しく世話を焼き、食事や薬の準備をしてくれる。

窓の外には柔らかな光が差し込み、カーテンがそよぐたびに部屋の中に淡い影を落とす。私は窓辺に座り込み、膝の上に手を重ね、視線は遠く霧に包まれた庭の木々へと漂っていた。

家族を失った痛みはまだ胸に重く、悲惨な光景が常に心を潰しにかかり、夜になるたびに涙が頬を伝う。日輪刀は手元に置かれているが、その冷たい金属の感触にさえ、心は応える力を持たず、虚ろに見つめるだけだった。心の奥には重たい影が残っている。

……自分は、生き延びるに値する剣士だったのだろうか。
あの時、親と一緒に殺されていた方が賢明だったのではないか。
こんな役立たず、死んでしまった方がいいのではないか。

私の目の光は、心は失ったままだ。

食事の味が感じないのも、普通は笑えるはずの話が何も感じない、夜になると悲惨な光景が鮮明に蘇り涙が止まらないのは、私を両親の所に逝かせたい神の意思なのだろうか。

蝶屋敷はいつも穏やかな空気に満ちているはずなのに、今の私の心にはその温かさを感じる余裕がなかった。薬や手当は身体の痛みを癒すものにすぎず、心の奥に残る深い悲しみは誰にも触れさせたくない鎧のように硬く、孤独を包み込んでいた。

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