第1章 『普通』
お館様の言葉に、父はハッと顔を上げた。
「…頭脳、でございますか?」
「あぁ。君の娘さんは、鬼の生態を分析し、鬼殺隊に貢献したいと願っている。その願いは、私たちにとって、とても貴重なものだ。力で鬼を倒すだけでは、いつか行き詰まるだろう。新しい力、新しい視点を持つ者が必要だ。」
お館様の言葉は、まるで魔法のように、私の心に希望の光を灯してくれた。私の持つ、何の取り柄もないと思っていた「頭脳」が、この場所で認められるかもしれない。
「彼女の熱意は、隊士たちの心を動かすだろうね。彼女が鬼殺隊に入隊することを私は許可するよ。」
お館様は、静かに、そして力強くそう告げた。
父は、言葉を失い、ただただ震える手でお館様に頭を下げた。
「お館様…娘を…どうか、よろしくお願いいたします…」
父はそう言って、私の方を振り返った。その瞳には、不安と…希望の光が宿っていた。
こうして私は、鬼殺隊の一員となることを、正式に許されたのだった。
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