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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第8章 蛇の恋色、愛の色


翌朝、私たちは朝食を共にした。

蜜璃さんが楽しそうに話す中、伊黒さんは相変わらず黙って食事をしていた。
しかし、その視線は、時折、私に向けられている。
まるで、私の一挙手一投足を観察しているかのようだった。

「…あの、伊黒さん、」

私は、意を決して話しかけた。

「昨日、私の言葉で、少しだけでも鬼の討伐に貢献できたこと、本当に嬉しかったです。」

私の言葉に、伊黒さんは食事の手を止め、私を見た。

「…貴様の言葉がなければ、蜜璃に危険が及んでいたかもしれん。その点については、感謝する。」

彼の口から出たのは、まさかの感謝の言葉だった。
私は、驚きのあまり、目を丸くして口角が上がった。

「…ありがとうございます!わ、私のような者でもやれるんだなって思えました!」

私がそう言うと、伊黒さんは、少しだけ、本当に少しだけ、表情を緩めたように見えた。

「…下賤な者、などと、口が過ぎた。謝罪しよう」

彼の言葉に、私は再び驚いた。
まさか、彼が謝罪してくれるなんて、夢にも思わなかったからだ。

「い、いえ!とんでもございません!…伊黒さんのお言葉、私の心に深く刻まれました!」

私が慌ててそう言うと、伊黒さんは、フンと鼻を鳴らしたが、その顔には、もう昨日のような冷たさはなかった。

「…貴様のような令嬢が、鬼殺隊にいるとはな。…面白い。」

伊黒さんはそう言うと、静かに食事を再開した。
蜜璃さんは、私のことと、伊黒さんのことを見て、嬉しそうに微笑んでいる。

「ほらね、知令ちゃん! 伊黒さん、優しいでしょ?」

彼の冷たい厳しさの奥に、確かに存在する優しさに触れた私は心の中には、彼の言葉が、温かい花を咲かせたような気がした。
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