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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第3章 水面に浮かぶ静かな村


夜明けが近づき、空が少しずつ白み始めていた。私たちは、何も言葉を交わすことなく、ただ静かに座っていた。冨岡さんの羽織に巻かれた私の足は、幸いにも出血が止まっていた。

「…ありがとう、ございます。」

私は、もう一度、心からの感謝を伝えた。彼は、何も答えなかったが、その表情はもう冷たくはなかった。

「…私、」

私は、静かに語り始めた。

「私は、裕福な家庭で育ち、鬼殺隊とは無縁の世界に生きていました。でも…炭治郎さんと出会って、鬼殺隊という存在を知りました。彼らが背負う悲しみ、そして守りたいという強い意志に、私の心は深く揺さぶられました。私に、何ができるだろう…そう思ったんです。」

彼は静かに耳を傾けてくれた。

「…私には、剣の才能がありません。力もない。でも、蜜璃さんの元で、愛の呼吸と、私の頭を活かした戦い方を見つけました。でも…あの鬼には、私の呼吸が通用しなかった。私の愛は…無力だった…。」

私がそう言うと、彼は静かに立ち上がった。そして、私の目の前にしゃがみ込み、私の目を見て言った。

「…無力ではない。お前の頭は、俺を救ってくれた。鬼の左腕が弱点だと、教えてくれたのは、お前だ。」

彼の言葉に、私は驚き、そして涙が溢れてきた。

「…俺は、妹を鬼にされた男の、悲しみも、怒りも、そして、守りたいという気持ちも…分からない…そう言ったが…それは嘘だ。俺には、守りたいものが…あった。」

彼は、そう言って、静かに夜空を見上げた。

「…でも、俺は守れなかった。だから…」

彼の言葉は途切れたが、私は彼の悲しみが痛いほど分かった。

「…だから、あなたは…自分を責めていたのですね…」

私の言葉に、彼は何も答えなかった。ただ、静かに頷いた。

「…私は、あなたの悲しみを、すべて理解することはできません。でも…あなたと一緒に、鬼と戦いたいです。あなたの守りたかったものを、一緒に守りたいです。」

私の言葉に、彼は何も答えなかった。ただ、静かに、私の頭を撫でてくれた。

夜明けの光が、私たちを包み込む。その光は、私たちの心の傷を、少しずつ癒してくれるようだった。

妹を鬼にされた男が炭治郎だったこと、そして冨岡さんにはもう1つ背負っているものがあることを知ったのはまた先のお話である。
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