第3章 水面に浮かぶ静かな村
初任務を終えてから一週間経った頃。
私は蝶屋敷の自室で任務の報告書を書いていた。
初任務で鬼を倒したものの、その際の立ち回りや鬼の分析など、反省点ばかりが頭をよぎる。
「うーん…あの時、弐ノ型ではなく、参ノ型を使うべきだったのかなぁ…」
私は眉間にシワを寄せ、紙に書いた鬼の行動パターン図とにらめっこしていた。
その時、窓の外から聞き慣れた声がした。
「ケッ!お嬢様!さっさと行けって言ってんだろ!チッ、本当にのんびり屋だな!」
私の鎹鴉、銀次郎だった。
初めて会った時からお嬢様のくせにと罵倒してきたこの鴉は、とにかく口が悪く、捻くれていると思う。
私は慌てて報告書をまとめ、立ち上がった。
「わかっております、銀次郎!今行きますから!」
銀次郎は私の肩に止まると、その小さな嘴で私の頭をコツン、と叩いた。
「チッ…お前、またそんなに考えてんのか。頭から煙が出そうだぜ。もっと要領良くやれよな」
「ごめんなさい…でも、もっとうまく立ち回れたはずなので…ふぇぇ…」
私がそう言うと、銀次郎は「ケッ!」と鼻で笑った。
「そうやってすぐ『ふぇぇ…』って言うんだから、お前は本当に…」
銀次郎は、それ以上何も言わなかったが、その声にはどこか呆れと、そして少しの優しさが混じっているようだった。
「自信持てよな!早く行くぞ!」