第14章 簪【宇髄編 第1話】
「知令は、君の期待に応えようと努力している。君の言葉が、彼女を支えている」
「……」
宇髄は何も言わず、静かに耀哉の言葉を聞いていた。
「知令は、君にとって…派手な存在なのだろう。」
「……派手、ですか」
宇髄は呟くように繰り返す。
「ああ。だからこそ、君は彼女を気にかけている。君は、自分の派手さだけでなく、他者の派手さも認めることができる。」
耀哉は慈しむような眼差しで宇髄を見つめる。
「君は、知令が本当の意味で強くなるまで、彼女を支えてやってほしい。それが、君に任せたいもう一つの任務だ。」
耀哉の言葉に、宇髄は深く頷いた。
「承知いたしました。任せてください。あいつを、派手に強くしてみせます。」
宇髄は、強い決意を瞳に宿し、まっすぐ前を向いた。知令の成長は、宇髄自身の喜びでもあった。
遊郭に潜む鬼の任務と、知令を導く任務。二つの重い任務を背負い、宇髄は静かに立ち上がった。
「では、失礼します。」
宇髄が深々と頭を下げ、縁側から去っていく。その後ろ姿を見送りながら、耀哉は静かに目を閉じた。
(……この子たちは、きっと、この世の鬼を滅ぼしてくれるだろう)
耀哉の心の中で、未来への希望が、静かに燃え続けていた。
─────