• テキストサイズ

【鬼滅の刃】屋烏の愛

第11章 生きるために剣を振れ 【冨岡編 第1話】


「…それでも……義勇さんと一緒にいたい。強くなりたいです。せめて……隣に立てるくらいに」

思わず、胸の内を吐き出すように言った。

義勇は驚いたように目を瞬く。それからふっと視線を逸らし、ほんのわずかに息を吐いた。

「……勝手なことを言うな。危険すぎる。」

 拒絶に聞こえる言葉だったが、声色には苛立ちよりも苦しみが滲む。

彼女はそれを感じ取った。彼が自分を守ろうとするあまり、突き放すような言葉を選んでしまったのだと。

「……それでも」

 小さく、それでも真剣に、言葉を返す。

「義勇さんに助けられて……私は生きています。だから……少しでも、恩を返したいんです!」

義勇の横顔が夕暮れに染まり、目元にかすかな影を落とした。長い沈黙のあと、低く呟く。

「……お前は……変わっているな。」

それは初めて、彼の口から洩れた微笑のようなものだった。

彼女の胸が熱くなる。傷や恐怖よりも、その一言が心を震わせる。義勇の厳しさの奥に、人知れぬ優しさが確かに存在しているのだと知れたから。

風が通り抜け、疲弊した身体を優しく撫でる。二人の間に漂う沈黙は、重苦しいものではなかった。
ただ、互いの存在を確かめ合うような、静かな余韻だけがそこにあった。
/ 179ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp