第2章 頭脳という刀
お館様の許可を得て、私は鬼殺隊員としての生活を、蝶屋敷で送ることになった。
両親は、不安と、それでも私の決意を尊重してくれた複雑な思いを胸に、私を送り出してくれた。私は両親の気持ちを裏切らないためにも、何としてでも鬼殺隊で役に立つ存在になりたかった。
蝶屋敷には、私の知っている平和な世界とは全く異なる、厳しさと優しさが混在する空気感があった。
「ようこそ。お館様から、あなたのお話は聞いていますわ。」
「お世話になります。よろしくお願いいたします。」
胡蝶しのぶ様は、穏やかな笑みを浮かべて私を迎えてくれた。小柄でありながら蟲柱という。穏やかで優しい笑みだが、その瞳の奥には、鬼に対する深い怒りが隠されていることを、私は一瞬で見抜いてしまった。
「私の呼吸は、あなたのように力のない者でも、鬼を倒せるように編み出したものです。でも、あなたには違う別の才能がある。それを活かすべきですわ。」
しのぶ様の助言を受け、私は鬼の生態や、藤の花の毒についての研究を手伝うことになった。書庫にこもり、分厚い書物を読み漁る日々。
鬼の弱点、行動パターン、そして、鬼殺隊の戦術。
「…少し根詰めすぎじゃないですか?休んだ方がいいですよ。」
深夜まで書庫で書き物をしていたら、2つ結びの女の子に声をかけられた。
神崎アオイと言っただろうか。
私があまりにも熱中して書庫に閉じ篭っていたからか、声を掛けてくれたようだ。
「ご心配、ありがとうございます。でも早くみんなに追いつきたいので。」
一言声をかけるとそれ以上アオイさんは何も言わなかった。そして、苦笑に近い笑みを浮かべて他の場所へと足を進めていった。
「頭脳」という才能が、この場所で役に立つかもしれないと、初めて希望を抱き始めた私にとって、休むという2文字は不要だった。