第1章 あすかさん
私は「あすかさん」という男性と暮らしている。
あすかさんは私を拾ってくれた人。とあるアパートで養って貰っている。あすかさんは動画配信者で人ひとり養うだけの人気のある人。ちなみに左隣の部屋のお兄さんも動画配信者であすかさんと仲良し。私も時々お邪魔しては漫画読んだり話し相手になってもらったりとごろごろさせて貰っている。
あすかさんは高めのテノールで穏やかに話す人で私を「」と呼ぶ。
ある時私達は婚姻関係になる。といっても式は挙げてないしそれらしいこともしていない。そもそも恋人同士でする事は何も致していない。それに私はあすかさんの本名を知らない。婚姻届を出したのはあすかさんだし、彼を本名で呼ぶ人と会ったこともない。手紙類も彼は絶対私には見られないようにしている。
それでも、あすかさんは私を好きだと言って撫でたり抱きしめたりしてくれる。私はそんなあすかさんが大好きだった。だから不安でも追求するような事はしなかった。
そんなある時、私はあすかさんが髪の長い女性に押し倒される形でベッドに共にいるのを目撃してしまった。私は彼のことを何も知らない。彼は私を愛してはいない。そう思うと涙が止まらなかった。
その日私達は初めてケンカをした。
「私、妻なのにあすかさんのことなにも知らない。あすかさんの本当の名前だって!」
「っうるさいなあ!飲んだものくらい片付けろよ!」
あすかさんが初めて声を荒らげた。私は台所にペットボトルを片付けてゴミを袋にまとめる。そして何も持たずに部屋を飛び出した。