第3章 媚薬 ※壬
「これが例の媚薬か?」
「そうですね。」
「ではアレは?」
壬氏が物珍しそうに見ているものは完成した媚薬と、猫猫のパン。
「アレは私の夜食です。」
答えた瞬間、壬氏、高順、玉葉妃、侍女頭のまるで変態を見るような目が猫猫に集中する。
「酒や刺激物に慣れてるので、私にほとんど効き目はありません」
「ほう。では私が食べても「「「それはお止めください!!」」」」
壬氏の言葉を遮るよう、高順、玉葉妃、侍女頭の声が重なった。
いくら宦官でも、天女の美貌が頬を染めて迫るようなことになったら、大変なことになるのだ。迫られた側が…。
猫猫が壬氏へ媚薬の用法の説明や玉葉妃と雑談をしてる姿を離れたところで見つめながら、自分の分の巧克力を見つめる。
ずっと確認したいことがあるが、聞きにくい内容…これの力を借りれば…確かめられるのでは…?あわよくば弱みとかも…と、悪い考えが沸いてきた。
ツンツン…ツンツン…
後ろから腕をつつくと、すぐに気付いてくれた。
「どうしましたか?」
間だ少し残る理性を使って、部屋の奥の高床を指差す。
今声を出すとちゃんと呂律がまわらない気がする。
取り敢えず高順のそれをちょっとつまんで、高床になっているところに座るように誘導する。
首を傾げながらも、浅く腰かけてくれたので、もっと深く座れと膝を押して、しっかり深く腰かけさせると、準備完了だ。
手に椀を抱えて、高順と向かい合うように彼の膝の端っこに座った。
「ちょっ!!! さん!?」
「おー......?」
驚いたらしい高順が半分ほど立ち上がったので、そのまま後ろに落ちそうになる。目測175cmの彼は155cmもない を膝に乗せたまま立ち上がることは簡単だ。座って分かったがやはり宦官と思えないほど筋肉質な体をしている。あえて抵抗せずにそのまま転がろうとすると、高順は慌てて の腰を両手で掴んで高床に座りなおす。
それこそが狙いだ。
これで多分きっと善良な高順はしばらく動けない。
「これ、美味しいよ?」
「...呂律が回ってませんね...まさか...」
「...美味しいよ?」
食べましたよ?媚薬を。2粒ほど。しかも酒入りで効果が強く出るやつ。
だから頭がまだ回るうちに、とりあえず早く食べろ。