第15章 見せつけられる実力・・・・。
―― の新曲収録は無事に終わった。
けれど、新の言葉が頭をよぎり続け、集中を乱されながらも、どうにか歌い切った。
スタッフが笑顔で声をかける。
「明日以降はミュージックビデオの撮影なので、よろしくお願いしますね」
「はい……!」
唯は努めて明るく返事をし、深呼吸をしてスタジオを後にした。
夜風に当たりながら帰路を歩いていると――
新「せ〜んぱい!おつかれ様です」
突然背後から声がかかる。振り返ると、そこには新がいた。
「……奇遇ですね」
にこにこと笑みを浮かべる新。
「今日、先輩の後の枠で杉田さんと一緒にアフレコ現場だったんですけど……すごい面白い方ですね」
その口調は無邪気に聞こえるが、目の奥は何か探るような光を帯びていた。
「そういえば、あの時3人でいたってことは……杉田さんと中村さんと同棲してますか?」
唯「同棲じゃなくて……私が空いてた部屋を貸してもらってるの」少し焦りながらも、きっぱりと答える唯。
新は首を傾げて、わざとらしく驚いた顔をする。
「え〜……杉田さんや中村さんと、そういう関係なのにですか?」
「……あのさぁ、新くんが何を言いたいのか全然わからないよ」
不快感を隠せず、唯は早足になる。
その腕を新がグイッと掴む。
「もしも3人でそういう関係なら……それって、すごく異常だと思いますよ」
「……っ」
唯は息を呑み、すぐに振りほどく。
唯「私、急いでるから」
それだけを告げ、踵を返してその場を去った。
振り返ることはしなかったが、背後に残る新の笑みを感じ取って、胸の奥に冷たい不安が広がる。