• テキストサイズ

幼なじみの人気声優〜スパダリ生活

第1章 第1章 アフレコ現場にて




某人気アニメのアフレコ収録。
スタジオに足を踏み入れた瞬間、唯は絶句していた。

神里 唯 27歳。独身、恋人なし。
高校時代、幼なじみたちよりも先に声優デビューを果たし、着実にキャリアを積んできた――そのはずだった。

だが今、唯の脳内は仕事ではなく、引っ越し問題でいっぱいだ。

「どうしよう……」
思わず、口から零れる。
まさか新居のマンション契約が成立していなかったなんて――。

─二時間前。
某有名不動産のオフィスで、スタッフが頭を下げていた。

『申し訳ございませんっっ! 手違いで契約が重複していたみたいで……すでに別のお客様が入居されております』

「えぇぇぇっ!? そんなバカな……」
声を荒げることはできなかったが、内心はパニックだった。

(前の家、明日には退去しなきゃいけないのに……!)
引っ越しを決めたのは、住所を特定した悪質ファンから逃れるため。都心部なら警備も厳重だし、安心できると思っていたのに……。

そんな唯に声をかけたのは、頼れる先輩だった。

唯ちゃん、どうしたの? さっきからため息ばっかり」
神谷浩史が眉をひそめ、その後ろから安元洋貴や宮野真守、櫻井孝宏まで顔を覗かせる。
さらに坂本真綾、沢城みゆき、水樹奈々と、豪華な面々がそろい踏み。
「心配してたんだよ。失恋でもした?」と、宮野が茶化せば、
「慰めてやろうか?」と櫻井が笑う。

「い、いえ……そんな、じゃなくて……」
観念して、不動産トラブルの顛末をかいつまんで話した。

「……それは災難だな」
神谷がぶっきらぼうに言い、
「じゃ、俺んち来る?」と何気なく続ける。

「えっ!? い、いえ! そんな、先輩にご迷惑を……!」
慌てて断った瞬間、横から坂本と沢城が食いついた。

「ちょっと浩史、それは危険でしょ!」
「そうよ、可愛い後輩を男の部屋に泊めるなんて野蛮」
水樹まで加勢し、笑いながら「うちにおいで」とまで言ってくれる。

(優しすぎる……)
胸がじんわり温かくなるが、迷惑をかけたくなくて、唯は丁重に断った。
「何かあったら連絡してね」と坂本に撫でられ、沢城に抱きしめられ、
「大丈夫だよ」と水樹に微笑まれる――そんな先輩方の気遣いに、少しだけ心が軽くなる。

/ 96ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp