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先生と生徒

第10章 夜明けまで許さない


彼「……はぁ……これで良い……。誰にも邪魔されない。お前は……俺だけのものだ。」

壁に凭れかかったまま、彼女は荒く息をしながら瞳を閉じた。

頭の中はまだ白く足元は震え、逃げ出す力など残っていない。

その夜、路地裏には2人の余韻だけが残り彼の支配の影が濃く刻み込まれたのだった。






まだ荒い呼吸が胸の奥で波打っていた。

夜の路地裏。

頬に触れる風は冷たいのに体は汗ばみ、喉は渇き、心臓の鼓動が耳の奥でやけに大きく響いている。

壁に片手をついて崩れそうになる体を支えながら、必死に呼吸を整えていた。

視線を落とせば、コンクリートに映る自分の影が小刻みに震えている。

自嘲するように目を閉じかけた、その瞬間だった。

甚「……なにやってんだ、オマエ。」

低く、掠れた声。

はっとして顔を上げると、そこに立っていたのは――

甚爾だった。

路地の入口に影を落とす大柄な体。

いつも余裕を纏ったような鋭い目つきが、この時ばかりは明らかに揺れていた。

心配、苛立ち、そして……

嫉妬。

その感情が混ざり合い、隠しきれずに瞳に露わになっている。

「と、甚爾……?」

掠れた声で名前を呼ぶ。

彼はゆっくりと歩み寄りながら、苛立ちを隠さずに言った。

甚「こんなとこで……ふざけんな。オマエ、なにされてた。」

射抜くような視線に、心臓がぎゅっと縮む。

自分のだらしなさも、愚かさも、すべて見透かされているようで思わず肩が震えた。

唇を噛みしめ、それでも必死に言葉を探す。

「……た、助けて。甚爾……連れてって……。」

その瞬間、彼の目がわずかに細められた。

次いで、大きな掌がめいの手首をぐっと掴む。

有無を言わせない力強さ。

けれどその温度は、どこまでも確かで心の奥を強く縛っていた恐怖をほどいていく。
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