第1章 誰にも言えない
夜の新宿、週末の雑踏。
ネオンが濡れたアスファルトに反射して、街はまるで酔ったように揺れていた。
五条悟はその喧騒の中を、1人で歩いていた。
いつも通り、適当な“遊び相手”を探す夜だった。
求めているのは深い繋がりでも、誠実な愛でもない。
——ただ、1夜を楽しめる女。
それだけで良かった。
だが今日はなぜか、どの女も彼の目には刺さらなかった。
そんなときだった。
裏通りに差し掛かった瞬間、何やら騒がしい声が聞こえた。
「……離して、って言ってるでしょ……!」
女のか細い声と、男の絡みつくような下卑た笑い。
五条は眉をひそめ、声のする方へと足を向ける。
薄暗い路地の奥で女が1人、酔ったサラリーマン風の男に腕を掴まれていた。
男「ちょっとだけで良いからさ、飲み直そ?な?」
「……っ!」
その女——
めいは怯えた目で男を睨んでいたが身体は強張り、逃げられずにいた。
五条の視線が彼女の華奢な肩、乱れた髪、そして濡れた瞳に吸い寄せられる。
理性よりも早く、身体が動いていた。